あくまでも主役は学生です。自ら目標を掲げ、常に「勝利」を追求し、努力を重ねる学生たちに、出来る限りの支援を行うのが法人の役割と認識しています。「勝利」という結果は大切ですが、それ以上に「人材育成」の過程が大事だと考えています。たとえ直ぐには結果が出なくとも、高い目標に向かって日々努力するからこそ人は育ちます。福澤諭吉先生が掲げた「全社会の先導者たらんことを欲するものなり」という「慶應義塾の目的」に即して「社会を引っ張るリーダー」を一人でも多く輩出するために、より良い環境作りに努めてまいります。

　スポーツ推薦がない慶應義塾が他の強豪校と伍していくためには、良質な指導体制の構築はもとより、フィジカル・メンタル面の専任コーチ、最先端のウェイトトレーニング環境、怪我予防・怪我の際の治療・リハビリ指導、食事面での栄養管理等、バスケットボールに集中できる最高の環境を整え提供することが極めて重要なテーマとなります。

　慶應義塾体育会バスケットボール部は、「慶應でバスケットがしたい」という高い志を持ち、受験（各学部の推薦入学を含む）の難関を乗り越えてきた部員と、慶應バスケットボールを体現してきた一貫校出身の部員がバランスよく融合することで、慶應ならではのチームが形成されていきます。

　「有力な部員の獲得」がチーム強化には欠かせません。受験生に対しては入試関連の相談や指導を、一貫校部員に対しては縦横の繋がりを強めながら、バスケットボールの楽しさを伝え、基礎技術の指導を実施していくことを推進します。

　主役である現役部員が体育会の活動を通し、慶應義塾の理念や、小泉信三先生の教えである「スポーツが与える三つの力（特に練習は不可能を可能にする、とフェアプレーの精神）」を実践すること、加えて（昨今のように）スポーツの環境がどの様に変容しようとも、ぶれない心で学生スポーツの本質をしっかりと捉え、正しい方向を導いていくこと、これらを中心に現役部員と丁寧な対話を継続し指導して参ります。結果として現役時代は魅力あるチームの実現に貢献し、社会に出てからは先導者として活躍できる人材を育成し輩出致します。

　以上の取組みと合わせて、「バスケットボール競技の普及」「技術力の向上」「地域社会の活性化」「会員相互の親睦」というテーマにも積極的に取り組みます。慶應義塾体育会バスケットボール部出身のOB・OGや、当法人のステークホルダーの皆様とのネットワークを最大限活用し、先進的な取組みを創造していくことを目指します。

　体育会バスケットボール部は、1924年設立の「慶應義塾籠球倶楽部」をルーツとし、1931年の体育会正式加盟からまもなく100 年を迎えます。この間、男子はインカレ優勝7回、全日本選手権優勝1回という戦績を誇りますが、部員数の減少など様々な理由から、近年は男女ともインカレに出場できておりません。またOB・OG組織である「バスケットボール三田会」は、法人格を持たないため「契約当事者になれない」など活動に不自由な部分があり、現役支援に万全の機能を発揮できておりませんでした。

　こうした中、強い慶應義塾体育会バスケットボール部の復活と、オール慶應バスケでの魅力ある組織づくりを目的に、「バスケットボール三田会の一部機能を切り出し、OB・OG が共同運営する一般社団法人を設立する方針」につき機関決定(2022年8月)をし、以降準備を進めて参りました。

　準備段階では、法人の目指す姿・目的を明確にして関係者と共有すること、意思決定の透明性を図ることを重視しました。また組織の持続的発展に向け、まずは守りを固めるところからスタートする、具体的には「コンプライアンスの徹底」と「ガバナンス強化」を目標に掲げ、少人数でスタートすることと致しました。設立時の法人メンバーは、OB・OGのバランスを取ること、中堅や若手のメンバーにも参画してもらうこと等、構成には拘りをもって対応致しました。

　以上の通り法人の組織運営を固めると同時に、慶應義塾のトップチームである体育会大学男子部・女子部の強化への活動支援（攻め）を推進することで、「魅力あるチーム」→「有力選手の獲得」→「上位リーグへの定着」→「慶應バスケ部ファンの拡大」→「賛助会員等の支援拡大」という好循環の流れを作って参りたいと考えております。

　慶応義塾体育会の先輩団体（OB・OG会）での法人設立は、空手部、蹴球部、野球部に続いて4団体目となります。設立にあたり、3団体の諸先輩方や、慶應義塾三田体育会の皆様には、経験等を踏まえた様々なアドバイスを頂戴しました。改めまして深くお礼申し上げます。

　現代社会は、福澤諭吉先生が慶應義塾を創立した江戸末期から明治維新のような、極めて大きな変化の時代に突入しています。故に改めて、慶應義塾の理念（以下のような）を再認識し活かしていくことが大切だと思います。

　「独立自尊」は、自他の尊厳を守り、何事も自分の判断・責任のもとに行うことを意味する慶應義塾の基本精神です。「自我作古（じがさっこ）」は、前人未踏の新しい分野に挑戦し、たとえ困難や試練が待ち受けていても、それに耐えて開拓に当たるという、勇気と使命感を表した言葉で、義塾の信条となっています。

　慶応バスケットボール倶楽部は、このような慶應義塾の気風を身に付け、社会の様々な分野で活躍する若手や中堅を含めたOBならびにOGが理事や社員となり、伝統の継承と、変化を見据えた先進的な取組みに挑戦・実践して参ります。

　幸い、昨年男子日本代表が48年振りに自力でオリンピック出場を決め、バスケットボール人気が高まっています。他方、大学スポーツ界の様々な不祥事が続き、活動の在り方が問われる時代でもあります。このような順風と逆風が吹く環境であるが故に、まずはコンプライアンスとガバナンスを固めるところからスタートするとともに、バスケットボール人気の流れに乗りながら、様々な攻めの活動に挑戦していくことで、好循環が生まれるように取り組んで参ります。

　皆様方に於かれましては、是非一度試合会場（特に早慶定期戦）に足をお運びいただき、慶應義塾バスケットボール部の戦いぶりと魅力に触れて頂ければと思います。